突然ですが、「速読」は好きですか?
私は好きです。ビジネス書であれば、いかに速く骨子を抜き取ろうかワクワクしながら本を読んでいます。
しかし、速読では身に付かないものもあります。
今回ご紹介する本『本の読み方 スロー・リーディングの実践』では、そんな速読の問題を見事に指摘しつつ、新しい解決方法が提示されていました。
なかなか胸に刺さる内容でしたので、その内容をお伝えします。
速読コンプレックスとは?
本の冒頭で書かれていた「速読コンプレックス」という言葉。ビジネスマンをはじめ、多くの人が「本を出来る限り速く、たくさん読まなければならない」という強迫観念に囚われているという主張です。
その気持ちはよく分かります。というのも、私が速読を学び始めたキッカケも「たくさん本を読まなければ」という焦りであり、いかに短時間で本の要旨を知ることができるか注力してきました。
これに対して著者は「速読家の知識は、単なる脂肪であり、贅肉だ」と強く意見していますが、これには納得できないものがあるので少々反論を。
- 速読は、自分が欲しい知識(ゴール)があってから、始めるものである
- そもそも、本の要旨は全体の1割〜2割程度しか書かれていない
- 大切なことは、自分が本を読む目的を失わずに、最後まで読み切ること
この3つが私の速読の考え方であり、おかげさまで苦手だったビジネス書を楽しく読むことができるようになりました。
ただ、小説はどうでしょう?『本の読み方 スロー・リーディングの実践』の著者である平野啓一郎さんは作家であり、この本で言いたいことは、ビジネス書ではなく小説に重きが置かれているように感じました。
小説とスローリーディング
著者の気持ちがよく伝わってきたのが、以下の言葉です。
小説を読む理由は、単に教養のため、あるいは娯楽のためだけではない。人間が生きている間に経験できることはかぎられているし、極限的な状況を経験することは稀かもしれない。小説は、そうした私たちの人生に不意に侵入してくる一種の異物である。それをただ排除するに任せるか、磨き上げて、本物同様の一つの経験とするかは、読者の態度次第である。
これは私の速読に対する考えと、真逆の方向を向いています。つまり、どこに向かって走るかを先に決めるのではなく、どこへ向かうのか分からない状態を楽しむ方法です。
「0の状態から楽しむ」と言えば良いのでしょうか?本を読んで自分がどう変化するのか、波に流されるように自然な変化を楽しむのも確かに読書の楽しみ方の一つです。
身に覚えもあります。私の大好きな『竜馬がゆく』は読み返す度に、新しい発見があり、まったく別の本を読んでいるような錯覚におちいります。過去の経験や今の悩みがそのまま読書に反映され、自分と向き合う時間が生まれるのです。
読書の楽しみ方はまだまだ広がる
冒頭での書きました通り、私は速読が好きです。
特にビジネス書をたくさん読んでいる現状を考えると、スローリーディングは少し違うのでは?と違和感を感じたくらいです。
ただ、読書の楽しみ方が広がったことは事実です。小説をゆっくり時間をかけて読みたくなりましたし、ビジネス書の新しい読み方についても考えてみたくなりました。
今の本の読み方に不安や不満を持っている人に、ぜひおススメしたい一冊です。
良かったら、ぜひどうぞ!