もし自分の体が2つあったら・・・。
こんな悩みを抱えたことはないでしょうか?
仕事と夢。大切な2つが直接交わらないと気づいたとき、あなたならどんな道を選びますか?
夢をあきらめて、仕事を選ぶ人もいるでしょう。
仕事をやめて、夢に挑む人もいるでしょう。
“二兎を追う者は一兎をも得ず”
有名な諺ですが、文字通り2つの目標を達成するのは至難の業です。
そんな至難にあえて真っ向から挑むビジネスパーソン、それが慎泰俊さん(@81TJ)です。
働きながら、社会を変えるには?
二兎を追って二兎を得るためには何が必要なのか?
この本を読みながらずっと考えました。
激務で有名な外資系金融機関できながら、仲間たちとLiving in peace (LIP)という団体を立ち上げて、児童養護施設のサポートを実施する慎さんのストーリー。
先に断っておくきますと、この本はいわゆるノウハウ本ではありません。前半は児童養護施設にて子どもの貧困に挑む著者の体験談であり、後半は子どもの貧困にかかわるデータがぎっしり詰まった論文です。
胸が熱くなって一気に読んだ前半と、頭をフル回転させて何度も読み返した後半。この2部構成の本を読みながら、2匹の兎を追い続けるために必要な3つのことを学んだので紹介します。
【1】圧倒的な原体験
仕事を続ける理由はたくさんあります。
安定した収入は家族を養うために不可欠な要素であり、組織だからこそ大きな目標を実現できる魅力もあるでしょう。
では、夢を追い続ける理由は何でしょうか?仕事が忙しくてあきらめる人もいれば、他にやりたいことが見つかってシフトする人もいるでしょう。
どんなに辛くとも、夢を追いかけられるとしたらその理由は何なのか?
慎さんは偶然訪問した児童養護施設で衝撃を受けます。不平等な社会の中で生きる子どもの言葉からで「何かするべきではないか」と直感し、子どもたちとの触れ合いを通じて共感し、彼らの成長や変化に感動します。
直感、共感、感動。密度の濃い実体験から生まれた感情の流れこそが、夢を追い続けるエンジンなのだと思いました。
補足をすると、体験の密度は内容ではなく自分の心持ちです。子どもたちの何気ない触れ合いから、多くのことを掴む感受性。
この感受性によって動いた心の変化の積み重ねこそが、夢を追い続けるための圧倒的な原体験なのです。
【2】プロとしての武器
問題を解決するときには2つのことを確認する必要があります。
まず何が問題なのか?そして自分に何ができるのか?
後者について、児童養護施設の先生でない慎さんは、先生の代わりになろうとしても無理があると断言しています。ただ、その代わりに資金集めの戦略と仕組みを考えます。外資系投資ファンドで磨いた専門性を活かしたサポートでした。
ここで強調したいのは、慎さんが子供の指導という専門性を、周りに頼っているということです。やらないことを積極的に選び、自分の得意分野で全力の勝負する。
自分にしかできないことは何なのか?
徹底した自己分析と専門性を活かした行動こそが、問題解決の鍵なのです。
【3】研ぎ澄まされた人間関係
原体験ができて、自分にしかできないことが分かったら、あとは何が必要なのか?
慎さんが代表を務めるLiving in Peaceの組織論からヒントを得たので、まずはその紹介から。
(1)(組織の)存在意義を見出す
(2)走りながら(活動しながら)考える
(3)多様な仲間を集める
(4)コアメンバーを増やす
(5)すべての仲間を大切にする
(6)言い出したら一人になっても続ける
(via: p243〜p250)
二兔を得るための最後の要素がここにあります。
それは夢に向かって一緒に走ってくれる仲間です。言葉にすると単純ですが、これは上の2つよりかなりハードルが高いです。
自分は変えられます。自分次第ですので。
一方、他の人はそう簡単には変えられません。(6)の表現からも、その困難さが伝わってきます。
しかし、現状では慎さんの周りにはたくさんの仲間が存在します。Living in PeaceというNPOは現在9人の代表者と50人を越えるメンバーで活動し、コミュニティには2,000人近い人が登録しています。児童養護施設の課題解決するための寄付プログラム「Change Maker」にはさらに沢山の人たちが参加しています。
一人一人の関わり方はバラバラです。しかし、コアメンバーを中心とした、誰もが協力しやすい、巻き込まれやすい仕組みを作れば、事業は続きます。
パートタイムだからこそ、事業継続の要となる仲間との信頼関係。巻き込み、研ぎ澄まされていく人間関係こそが2頭を追う最後のポイントだと思いました。
【+α】2兎を追うための基礎人間力
この本から掴んだを、夢と仕事を両立させるためのエッセンスをまとめましょう。
1. 開かれた感受性で味わう濃厚な原体験
2. 磨き抜いた専門性をフル活用した行動
3. 上の2つを持った信頼できる仲間たち
以上ですが、必要なことが分かったところで明日から2匹の兎を捕まえられるわけではありません。
ライフネット生命副社長の岩瀬さんのブログでも紹介されていますが、この本では慎さんの並外れた人間力について触れられていないのです。
以前の記事でも紹介した通り、慎さんは“テツ”の人です。
アイアンマンレースを完走する鉄の肉体、何千冊という本に裏付けられた哲学、やるときめたことを最後まで貫く徹底さ、この3つの“テツ”をもった慎さんだからこそ二兎を追い続けることができていると思います。
目の前にたくさんある課題について、たった一つに取り組む、と言わずに、きちんと優先順位をつけてそれぞれの課題に自分の24時間を割けばよいのではなかろうか。
(via: p5)
これは目次で述べられた慎さんの言葉ですが、単なる効率化の話ではありません。
現実を厳しく見つめ、仕事と夢の両立のために頭と体をフル回転させる。
もし思うように動けないのであれば、動けるだけの基礎人間力を身につける。
当たり前の結論に聞こえますが、もう一度この原則を頭と体に刻み込み、少しずつしっかり努力していこうと思います。
@3_wa