『クレイジーパワー』

SPONSORED LINK
carzy_power
photo credit: c2k2e via photo pin cc

◆本のイントロと概要

“常識のある人は、自分を世間に合わせようとする。
  非常識な人は、世間を自分に合わせようとする。
   ゆえに非常識な人がいなければ、この世に進歩はありえない”

劇作家ジョージ・バーナーの言葉から始まるこの本は、
「常識を超えた(=クレイジー)パワー」の紹介として、
新たな市場を切り拓く人々――社会起業家の紹介をしている。

紛争、テロ、貧困、飢餓、伝染病、気候変動など今、世界は現在多くの問題に直面している。
しかし、これこそが「新たな市場」の基盤と成り得ることが実証されつつある。
そんな市場を生み出している人々が「社会起業家」であり、
この本ではインタビューや対話などによる彼らの生の声を紹介しながら、
ビジネスモデル・資金調達・マーケット・リーダーシップの手法を分析・考察している。

 

10大格差と社会起業家

“困難なときでも必ずチャンスはある”

これはアインシュタインの言葉であり、
この本の第三章では「困難(社会問題)」を10に細分化し、
その問題の中から「チャンス(市場)」を見出す人々を紹介している。

このフレームワークは参考になったので、10の格差とそれに取り組む社会起業家をそれぞれ紹介したい。

①【人口増加】

●ミーチャイ・ウィラワイタヤ「PDA(人口と地域開発協会)」
《活動内容》
「深刻な問題を早期に発見することと、その明るい面を示すこと」に成功したミーチャイ。彼は性の話がタブーだったタイで、「コンドーム膨らませ大会」や「ミス・コンドーム美人コンテスト」を企画し、タイの出生率を驚異的ペースで低下させた。彼は「コンドーム王」の異名をとり、人々がコンドームのことを「ミーチャイ」と呼ぶまでにもなった。
●ジェルー・ビリモリア「チャイルドライン」(子供支援)
●リック・サーピン「CHCA・PHI・ICS」(対高齢化)

②【経済的格差】

●ジェルー・ビリモリア(子供たちに金の扱い方を教え、彼らの地位を向上)
●「キックスタート」(起業家セクターの発展促進→ケニアのGDPの0.6%以上)
●ファルズ・アベット「BRAC」
《活動内容》
貧困者が潜在能力を発揮し、自助組織を通じて自らの生活を改善していけるよう支援を行う。たとえば、乳牛を飼育する女性が利益を上げていないと分かったら、供給側でアル女性の飼育する乳牛の品種を変え(前方連関効果)、顧客となる近代的な乳製品工場を新たに設置する(後方連関効果)など。その規模はバングラデシュ最大。

③【食糧問題】

●古野隆雄「古野農場」(アイガモ農法)
●ヘクトル・ゴンザレス「クアドリトス」(廃棄物→安全&味にも優れた食品)

④【資源問題】

●フィル・ラロッコ「E+Co」
●ファビオ・ロサ「IDEAAS」
《活動内容》
ブラジルの農村地帯に住む数十万人のヒン高層に電力を供給するシステムを開発。消費者価格は90%以上もダウン。現在では、太陽光発電エネルギーと電気フェンスを用いて農業や放牧のシステムを向上させると同時に、貧困・土地の劣化・地球温暖化といった問題の解決も図る。

⑤【環境問題】

●ヤン・アルテュス=ベルトラン「The Earth from the air(写真集)」
●ワンガリ・マータイ「グリーンベルト運動など」
(※2004年、ノーベル平和賞受賞)

⑥【健康問題】

●ベンカタワスミー医師「アラビンド・アイ・ホスピタル」
●ヴェラ・コルディロ「ヘナセ」
《活動内容》
ボランティアをフル活用し、退院直後の子どもがいる貧しい家庭を対象に支援を行う。栄養に関するアドバイス・心理カウンセリング・職業訓練などの支援を12ヶ月間に渡り提供することで、子供の再入院は6割以上も減少。現在この成功を全国へ展開しようとしている。

⑦【男女格差】

●呉青「北京農家女性文化発展センター」

⑧【教育格差】

●バンカー・ロイ「ベアフット・カレッジ(裸足の学校)」★
●カイル・ジンマー「ファースト・ブック(インド)」★
●ウェンディ・コップ「Teach For America」★
●マイケル・ブラウン、アラン・カゼイ「City Year」「AmeriCorps」
《活動内容》
若者たちを公益活動に従事させることで、アメリカの抱える深刻な問題の対応へ。そのユースプログラムでは17~24歳までの若者が一年間フルタイムで社会的ニーズに応えるための公益活動に従事する。1100人以上のメンバーがアメリカ16箇所、アフリカ1箇所で学校や地域で活動を行う。
●ハビエル・ゴンザレス「ABCDエスパニョール」
●「ネット・インパクト」

⑨【情報格差(デジタルデバイド)】

●ムハマド・ユヌス「グラミン・フォン」★
●オルランド・リンコン・ボニーヤ「パケルソフト」
《活動内容》
コロンビアの貧困地域の若者をIT起業家集団に変身させるイノベーションパーク。社会的な影響力を持つ仕事に従事しながら、起業のチャンスが与えられる環境に多くの有能な若者が群れている。
●「e-inclusion(デバイドの解消)」(※ヒューレッド・パッカードが実施するも中止)
●ニコラス・ネグロポンテ「ワン・ラップトップ・パー・チャイルド」★

⑩【安全保障問題】

●イブラヒム・アボレイシュ「セケム(エジプト)」
(環境負荷を軽減、食の安全も考慮)

「盆栽」消費者

“盆栽”

バングラディシュの最も貧しい人々をムハマド・ユヌスはこう例えた。

“種には何の違いもないが、土壌が間違っていると成長しない”

貧困から抜け出すには“土壌(社会環境)”を変えるだけで十分だと彼は主張する。
その土壌は、
・アクセス
・価格
・品質

と大きく分けて3つの側面から改善できるとの考察が書かれている。

感想

上記内容のように、この本では30以上の事例と、それに基づくビジネスモデルの分析・考察が書かれていた。
資金源や顧客のニーズなどを細分化(フレームワーク)してくれている点が分かりやすく、
実際にアクションを起こす上で参考になる考え方・実例が多かった気がする。
(ゆえにindexがないのは残念だった…。)

★はこれから更に掘り下げ、調査してみようと思っていることであり、
“自分に何ができるのか?”“自分は最後何がしたいのか?”先人たちの偉業を参考にしてしっかり考えたい。

SPONSORED LINK
carzy_power