バングラデシュ渡航期⑦ 一本の線

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胎動(20100130)

胎動(20100130)

夢がはじまった。

“税所篤快”

彼と出会って夢が生まれてから
夢は膨らむばかりだった。

“途上国の農村に衛星授業形式の予備校をつくる”

23年間の人生を経て、崩壊と再生をくりかえしてきた細胞たちが、
ここぞとばかりに雄叫びをあげ、鼓動を速める。

“今、動け!!”

帰国日が迫っていたので、
この日は工場の方に頭を下げ、
ダッカ大学へ。

目的は情報収集。
文献や人づての話を今ひとつ信頼できない自分たちは、
ダッカ大学100名の学生のリアルな声を拾いに行った。

事前調査では、
ダッカ大学入学者のうち80~90%は予備校経験があり、
そのうち80%以上が予備校の重要性を認めていた。

実際に調査をしたところ、
前者はほぼ同じデータになったが、
後者のデータにズレが生じ、[あまり重要ではなかった]の声が予想以上に多かった。
そこで、理由を詳しく訪ねてみたところ、

*予備校が利益重視で、肝心の授業の内容が希薄だった
*ファームゲート(大手予備校の密集地帯)に比べて、他地域の塾の講師は見劣る。
*俺なら戦略の立て方をはじめ、もっと上手く教えられる

と、期待以上の答えが帰ってきた。

これはいけるのでは??

と期待と自信を胸に、後半はアンケートの趣旨を訪ねてきた学生たちに
僕らのプロジェクトの概要を説明した。

感触は、良好。

中でも、地方出身で受験勉強に苦しんだ学生がいて、
その彼は[今すぐにでも協力したい!俺に何ができる?]と
力強く温かい言葉をくれた。

アンケートはあつの友人の協力もあり、
3~4時間程度で終わった。

その日の夜、簡単な打ち上げもかねて大学近くで食事をした。

2個下の彼に思いっきり頭を下げた。

本気でプロジェクトに参加したかった。

彼は二つ返事でOKしてくれ、
こうして正式にプロジェクトメンバーになった。

夢のためにこれから頑張れることがとにかく嬉しかった。

 

一本の線(20100131)

一本の線(20100131)

エクマットラ

ベンガル語で[皆が共有できる一本の線]という意味。

社会的格差が増していくバングラで、
弱者には教育を、
強者には啓発活動を行い、
双方の歩み寄りを図る民間活動団体。

この団体の創設者のひとりは日本人であり、
現在顧問として活動を行う渡辺大樹さん。

渡辺さんの経歴はぜひHPをご覧になっていただきたいが、
中でも、
「自分という一人の人間が存在したことで一人でも二人でもいい。
子供たちが可能性を感じ自由に未来を夢見られることができたら。」

この言葉を読んで、思わず胸が熱くなった。

教育100年と言われるように、
その成果は見えにくく、現れるまでに長い月日がかかる。

では、それでも教育に携わりたい自分の理由は何なのか?

答えは単純にして明確。
彼らの未来を変える力があるから。
彼らの可能性を開く力があるから。
俺が先生からの教えで未来が変わったように、
俺が生徒からそのことを改めて教えてもらったように。

結局のところ、自分自身のためなんだと思う。

だからこそ、渡辺さんはあんなにも素敵な笑顔で仕事をするんだろう。

そんなことを先日1日同行させて頂いた際に感じた。

だからこそ見たかった。

渡辺さんの、同じ想いの下で集まった皆の、夢の結晶たちを。

到着してすぐ、子供たちは満面の笑みで僕を迎えてくれた。
路上で、アリ地獄のような街の路上で暮らしていたとはとても思えなかった。

食事の時間、ある女の子が僕の隣に座った。
ご飯を食べながらマイケルジャクソンの真似をする彼女の夢は、
ダンサーになることだそうだ。

ただ、彼女も以前はストリートで暮らしていた。
失ったものは大きく、彼女は幼いころの栄養失調が原因で、
骨格が歪み、身長が今後あまり伸びないらしい。

それでも、彼女は笑い、謳う。
“だったら小さなダンサーになるよ、ははははは”
彼女は自分の病気を知ったときもこう言ったという。

また、胸が熱くなる。

きっとこれなんだろう。
渡辺さんたちが本気で頑張り続ける理由は。
彼女たちからも沢山学んで、いっぱい笑顔を交換していくんだろう。

彼女の笑顔は、渡辺さんに似ていた。
ほかの子供たちも、インターンとして働く水谷さんも同じ笑顔をしていた。

“エクマットラ”だった。

 

技術が存在する理由(20100201)

技術が存在する理由(20100201)

“真実は現場に生息する”

これを聞くと皆は踊る大××線のワンシーンを思い浮かべるかもしれないが、
僕の場合、ヒゲとオールバックが良く似合う、変わったおじ様を思い浮かべる。

アインバールハイトと自称する純日本人の早稲田大学(公共政策大学院)の教授は、
大学時代に最も影響をうけた先生の一人である。

そんな先生の座右の名がこの言葉。

“地域経営”の授業をはじめ、
いくつも持つ授業の中で先生は必ずこの言葉を引き合いに出す。

昨年は先生の言葉に習い、”新しいツーリズム”の発見を目指し、
冬の高尾山を深夜から登るツアーを試し、皆で風邪をこじらせたこともあった。

そんな珍事件があっても、僕はこの言葉が大好きだ。

百聞はしょせん耳しかつかわないが、
一回の現場では、全身でリアルを体感することができる。

だから、今回も現場に行った。

エクラスプール

エクラスプール

ダッカからバスで1時間、船で2時間半かかるこの村は、
まさに”途上国の農村”というに相応しく、夢の舞台になる場所だ。
(この村は以前よりあつたちが運営したGCMPというプログラムの実践地でもある)

行き帰りをするだけで、5時間以上。
とてもじゃないけど、ダッカの予備校には通えそうにない。
こんな当たり前のことを、実際に船にのることで初めて体で理解する。

現場はさらにリアルが多かった。

エクラスプール2

*Wi-Fiが飛んでるにも関わらず、PCの利用者すらほぼいないこと
*高校の生徒たちは刺激を望んでいたこと
*大学志望の学生もHSC(高校卒業試験)の後のことは考えられていないこと

おもわず”勿体ない”と思ってしまうことばかりだった。

僕は幸福なことに、沢山の人たちから常に背中を押してもらい、
ここバングラで最高の経験をさせてもらってる。

でも、彼らは??

力になりたいと本気で思った。
目で見て、耳で聞いて、肌で感じることで初めて本気になれた気がする。

村の彼らは、ダッカの同年代の学生が今何を勉強してるのか、
これから何を勉強するのか、それを知る術は持っていない。

だったら、彼らの目となり耳となり、
目に見えない理不尽な距離を少しでも近づけたい。

そのための衛星授業であり、
そのために技術は存在するのだと思う。

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