2015年が始まって早2ヶ月。
なのに私と言えば、まだ新年の目標を決められずにいました。
ミャンマー、京都、島根、インドネシア、茨城、フィリピン。年が明けてからというもの、自宅のある東京にいた時間はわずかで、ずっと国内外を飛び回っています。
ただ、どこに向かって走るか、何を支えにして立っているか分からない生活は中々苦しいもので、どこか地に足がついていない毎日を過ごしていました。
そして訪れたフィリピンのカミギン島。インターネットが繋がらない島で、改めて今年の目標を考えてみました。
2ヶ月遅れではありますが、やっと新年の目標ができたので、この記事を通じて皆さんへお伝えします。
昨年の漢字は「走」。けど、実際は・・・。
今年の抱負をお伝えする前に、昨年の抱負の振り返りを。
退職して初めて迎えた2014年の年明けは、思い出すと恥ずかしくなるくらい希望に満ち溢れており、すぐにでも走り出したくなるような衝動から「走」という漢字を1年のテーマにしました。
この記事の中であげた5つの抱負は以下の通り。どれも絶対実現できると自信をもってあげた目標です。
1.途上国20カ国で映像教育プロジェクトを展開する
2.日本の大学生30名の挑戦を支え抜く
3.月間30万人に読んでもらえる途上国メディアをつくる
4.新たに2つの言語で自分の想いを表現できるようになる
5.体重を25キロ落とし、フルマラソンを4時間以内に完走する
しかし、現実はそんな優しいものではありません。
5つの目標のうち、実際に達成できた目標は一つもありませんでした。もちろん上部だけの数字を見れば達成できたものもありますが、少なくとも私自身は納得していません。
原因は明白。仕事においてもっと重要な課題があったことをずっと見落としていたからです。
「組織経営における課題は、すべて経営者に起因する」
このことに気づいたのは昨年の11月。2014年がほとんど終わろうとしている中、私はもう一度1年間をやり直したい気持ちでいっぱいでした。
上の記事でも紹介した通り、経営者としての経験値は増え、組織のトップとして何をするべきかはハッキリし、振り返れば本当に充実した1年でしたが、それでも年初に立てた目標の甘さは反省すべき課題の一つでした。
だからなのか、どうしても新年を目標を立てられずにいたのです。
2014年ずっと守り続けてきた一つの約束
そんな私ですが、新年に立てた目標のうち、一つだけ実現できたものがありました。
それは「禁酒」です。昨年初めに宣言してから1年間、本当にお酒を一滴も飲みませんでした。
自分で言うのもなんですが、すごく頑張りました。元々お酒が好きだったこともありますが、嬉しい席や楽しい席でお酒を飲まないというのは何だかマナー違反をしているような気分でした。
それだけではありません。退職祝いの席や、尊敬する方々からお誘いいただいたお酒の席でも、ずっとノンアルコールビールを頼み続け、「せっかく誘ってもらったのに」と申し訳ない気持ちになりました。
「もういいじゃないか」
「十分頑張ったよ」
「そんな小さな約束気にするなよ」
こういった言葉に何度も揺らぎそうになりましたが、それでも小さな約束を守り続けてきたのには理由があります。
一言で言えば、それは「覚悟」でした。
2014年が明けてからすぐ、私は社会起業大学で講演する機会をいただきました。新年一発目の講座ということで、何か相応しいテーマを用意できないか考えた結果、「覚悟」をテーマにしたプレゼンをしました。
「今年は◯◯する」といった目標を作るのは簡単ですが、そう簡単に実現できるものではありません。「明日から」「仕事が忙しくて」など、様々な言い訳をして、実際に実現出来る人はほとんどいないでしょう。
でも、「●●をしない」という目標ならどうでしょう?今日からでもすぐに始めることができ、覚悟さえあれば必ず実現できます。だから皆さん、ぜひ今年は私と一緒に「しない」一年間にしてみませんか?
うろ覚えではありますが、こんなプレゼンだったと思います。
会場にいた人たちにどこまで響いたかは分かりませんが、少なくとも私は、あの日、「お酒を飲まない」という約束を自分自身としました。そして1年間約束を守り続けることができました。
覚悟と言い訳
今振り返って思うのは、「覚悟」の逆にあるものが「言い訳」であるということです。例えば私の場合、何か言い訳をつけてお酒を飲むことはできました。
「めでたい席だから」
「お酒の力を借りた方が話せることもある」
「1日くらい例外があってもいいじゃないか」
ただ、どんな言葉を並べてもそれは言い訳でしかなく、覚悟と天秤にかけた時、私は迷わず覚悟を選ぶことができました。
以前ブログを3ヶ月毎日書くという時も、同じような覚悟を持っていました。「言い訳をする癖を治したい」という覚悟で、3ヶ月毎日どんなに仕事が忙しくても描き続けたのです。
ブログを書くことも、お酒を飲まないことも、皆さんから見ると凄く小さなことに感じるかもしれません。
でも、私にとってはとても大切なことであり、だからこそ、自分の全てをかけるくらいの「覚悟」をもって挑みました。
捨てられない夢なら、捨てるほどの覚悟で
これは浪人生活をしていた10年前から変わらない私の座右の銘ですが、年を重ねる度に少しずつ言葉の重みが分かってくるようになりました。
昨年は1年の初めに立てた目標はほとんど実現できませんでしたが、それでも覚悟を持って走りきった1年ではありました。
そんな1年間の経験を踏まえて立てた2015年の目標が「忍」という漢字一文字です。
刃を研ぎ、心を磨く一年に
「忍」という漢字はずっと前から好きでした。
ニンジャに憧れていたわけではありません。ただ、「刃」と「心」を組み合わせると「忍ぶ(我慢する、耐える、じっとこらえる)」という意味になることが、凄く腑に落ちるものだったからです。
これはきっと私が野球に打ち込んでいたからでしょう。野球は「忍」のスポーツだと思っており、その典型的な例えが素振りではないでしょうか?
私は毎日誰よりも素振りをしようと努力していました。誰もいなくなったグラウンドで一人黙々と素振りをしていましたが、決して嫌なものではありませんでした。
野球に限らずスポーツをしていると、技術(刃)と精神(心)を同時に鍛えているような感覚になります。
努力が報われるという確信があるわけでもないのに、それでも毎日素振りに打ち込むのは単に技を磨くだけではありません。たぶんそれは大切な試合がやってきたときに「大丈夫だ」と自分に自信を持たせるための心を磨くための訓練なのです。
私の高校(野球部)では、冬になるとウォーミングアップとして毎日7kmマラソンするという、毎日悲鳴をあげるような練習ばかりでしたが、それは春になったとき大きな力となって自分に返ってきました。
「きっと大丈夫だ」
野球だけでなく、勉強にも自信が持てるようになりました。一つのことに打ち込み、自分やチームの限界を超えるまで「耐え忍ぶ」ことで、様々な扉を開くことができたのです。
だから今一度、あの時を思い出しながら、今年は「忍」の1年にしようと思います。これからやってくるであろう大きな勝負の時に備えて、刃を研ぎ、心を磨く年にしようと思います。
どうしても実現したい5つの目標
さて、ここからは「忍」の1年にするために、私が立てた5つの目標を紹介します。
どれも抽象的な目標ばかりですが、だからこそ「忍」の1年に相応しい目標だと思っていますので、よかったら最後までお付き合いください。
【1】1回勝つために9回負ける覚悟を
私は負けず嫌いです。
だから負けそうになると、いつも負けない方法を考えます。
こう言うと響きが良く聞こえるかもしれません。ただ、想像してください。負けると分かっていることに(もしくはもう負けが決定しているのに)ずっと打ち込むのは、他のチャンスを逃してしまうことにつながります。
これはユニクロの創業者である柳生さんの著書ですが、この本を通じて学んだ一番のことは失敗を恐れないことでした。
負けず嫌いな私は、時々勝つか負けるか分からない勝負を避けてきました。でも、それじゃダメなんです。これが仕事である以上、つまり誰かの課題を解決して苦しんでいる人が笑顔になる可能性がある以上、やはり挑む必要があります。
大切なことはいかに早く失敗して、次につながる教訓を得て、新しい挑戦を始めることができるか。このサイクルをどれだけ高速に回すことができるかが鍵なのです。
失敗や負けには痛みが伴います。失敗は嫌ですし、負けは悔しいです。誰だってできれば避けたいでしょう。
ただ、日本を代表するような経営者が、もしくはシリコンバレーで成功した起業家が「失敗」の重要性をあげるのは、それが未来への大きな投資になるからに他なりません。
今年は負ける可能性のあることでも、どんどん挑戦します。9回負けた先に1回勝つことができれば良いというつもりでチャレンジしていきます。
【2】不確実性や曖昧さを受け入れながら前に進む
私は意地っ張りです。
だから、意地を張るのに値する答えが見つかるまで、なかなか踏み込むことができません。
でも、それじゃダメでした。自分が答えを出すのに悩んでいるうちに、どんどん時間は進んでいきます。
自分だけならいいかもしれません。でも、周りで一緒に頑張ってくれる仲間がいるなら、前に進む必要があるのです。
ではどうしたら良いのでしょうか?
意思決定よりも、曖昧さに耐える時間の方がはるかに長い
これはKaizenというIT系スタートアップの社長の須藤さんの記事『スタートアップの経営で学んだ5つのこと』の一部なのですが、読んでいて心が震えるほど共感しました。
少ない情報から意思決定することはリスクが高く、曖昧で中途半端な状態がしばらく続きます。一緒に働いているメンバーからしたら、きっと堪ったもんじゃないのですが、大きなことになればなるほど、自信を持って決められなくなります。
須藤さんが自信を持って意思決定できるという手応えをつかんだのは1年半くらい経ってからとのことでした。以前記事でも書いたとおり、私が本当の意味で経営者になれたのは昨年11月だと思っているので、そこからカウントするとあと1年くらい時間がかかる計算です。
それまでは仲間の皆にもどかしい思いをさせてしまうかもしれませんが、それでも不確実性や曖昧さを受け入れながら前に進むと決めました。
今年の1年はこの曖昧さに耐え抜いてみせます。
【3】決断と戦略を心がけ、自分にしかできないことに打ち込む
私は欲張りです。
だから、「あれかこれか」という選択を迫られると、すぐに「あれもこれも」という方法を考えようとします。
でも、この方法には無理がありました。「あれもこれも」を選んだばかりに、組織の目指す方向が不明瞭になり、仲間たちには随分と迷惑をかけました。
また、自分の仕事においても同じことが言え、なんでも手をつけたために途中でパンクし、仕事においても大きな負の影響を出したのです。
詳細はぜひ先日書いた『会社を辞めてから1年。NGOの代表になってから半年。2014年を振り返って思う7つのこと』という記事をご覧いただければと思いますが、組織の経営における決断力の無さを痛感しました。
断つことを決め、戦うことを省略する
昨年学んだこのことを、今年はしっかり実践していこうと思います。
特に意識したいのは、自分というリソースをどう使えるかどうか。
これは奢りでも何でもなく、組織の経営者という立場は非常に強力です。経営者にしかできないことは無数にあり、そこにどこまで注力できるかが組織としての成長につながるのです。
経営者の1時間がどれほど大切なものか、もっとよく考えろ
これは尊敬する経営者であるマザーハウスの副社長・山崎さんから昨年アドバイスいただいたことですが、恥ずかしながらそれまで自分(経営者)の時間と仲間の時間の違いを考えたことはありませんでした。
「これはきっと皆やりたくないだろうから、自分がやろう」
こんなことを思っては小さなことに随分と時間を使ってきましたが、仲間に頭をしっかり下げてお願いし、自分のやるべきことにもっと注力する必要がありました。
経営者になった瞬間から、もう自分の頭や体は自分だけのものではありません。組織の代表として今何をすべきなのか、もっともっと自分にしかできないことに注力するために、今年は決断と戦略を心がけていきます。
【4】表に出る努力ではなく、内側を磨く努力を
私は見栄っ張りです。
だからなのか、昔から人前に立つことが多く、大勢の前でプレゼンの機会も沢山いただきました。
昨年はフィリピンのミンダナオという地域におけるカンファレンスにて、4000人の先生を前にプレゼンをしました。
全身が震えるような興奮と感動。緊張の何倍も大きな喜びがありました。もちろんそれは私たちの活動が評価されたことや、これまでの険しかった道のりを振り返っての感動がありましたが、大勢の人前で話すこと自体に喜びがなかったかと言えば嘘になります。
他にも昨年は大学や大学院でも講義をさせてもらい、一昨年までは視聴者として参加していたSocial Good SummitやNPOマーケティング フォーラムにも登壇させていただくことができました。
これまでの努力が報われたような気がしました。
ただ、正直に告白すると、何か物足りなさも感じていました。
その物足りなさをハッキリと自覚したのはBen & Jerry’sのコンペティション「集まれ!よよよい仲間たち」決勝で、関西のホームレスの自立支援を手がけるNPO法人Homedoorの代表・川口加奈さんに負けた時です。
表彰式が終わってすぐに、川口さんのプレゼンの内容を聞きました。そこで分かったのは、プレゼンの方法ではなく「内容」で負けたということでした。
川口さんは中学生の頃からホームレス問題の解決に打ち込んでおり、彼女の中には私も何倍もの経験が詰まっていました。また、NPOの経営者としての経験も私より遥かにあり、ここに「物足りなさ」の答えを見た気がしました。
昨年までの私は、どうやって自分自身のことを理解してもらい、自分たちの団体のことを応援してもらえるか、うまく見せようとして必死でした。
具体的に言えば、昨年はプレゼンの方法を磨くことに随分とたくさんの時間を費やしましたが、その前にするべきことがあったのです。
それは内側を磨くこと。
プレゼンのスライドを磨く時間を使えば、インタビューの答えを事前に用意している時間があれば、もっと進められる仕事があります。
だから今年は表に出る努力よりも、内側を、つまり事業を前に進めるための努力をしていきます。
プレゼンのクオリティに納得できなくても、インタビューにうまく答えられなかったとしても、その後悔の時間を事業を前進させるために使っていくことをここに誓います。
【5】3年後を見据えて、深く潜る
私には好きなことがあります。
しかし、なかなか理解されない趣味が多く、その代表的な例が「ブログ」です。
このブログを前から読んでいただいている方はご存知の通り、私は以前1年以上毎日ブログを更新していました。しかも、仕事(国際協力)とは関係無いことばかり書いていたので、「今の仕事に不安でもあるの?」と友人から心配されもしました。
でも、私にはハッキリとした目的がありました。「好きなことを仕事に繋げる」という目的があり、そして途上国のイメージを豊かにするというコンセプトのWEBマガジン『トジョウエンジン』を立ち上げました。
もちろんすぐに軌道にのったわけではありません。立ち上げてからというもの、最初は興味もあってか皆協力的でしたが、次第にコミットしてくれる人は減っていき、しばらくの間、編集長の佐藤慶一と二人で記事を更新する日が続きました。
トジョウエンジンを立ち上げてから2年、ようやくNPOのコンテンツマーケティング優良事例といった形で周りから評価してもらえるようになりましたが、だからといって人手が足りているわけではありません。今も締め切りに追われながら記事を更新しています。
でも、それでいいのです。
メディアを立ち上げたその日から、少なくとも3年間は苦労する日が続くだろうと覚悟していました。
以前読んだ『ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である』の中で、「成功するまでに3年くらいかかる」という言葉がありました。大半の場合、その3年間は試行錯誤の連続であり、これはブログに限った話ではありません。
好きなことを仕事にするためには、大抵3年くらいはかかるものです。
大事なことは、それを見据えてどこまで深く潜る(=ハマる)ことができるか。日の当たらない真っ暗な海の底で財宝を探すように、「これだ」と思えるものが見つかるまで深く潜らなければなりません。
昨年、社会人になってから久しぶりにブログと同じくらい好きなものができました。まだ、仕事と結びつけるイメージはぼんやりとしかできておらず、そのためなのか以前同様全く周囲から理解を得られていません。
でも、それでいいのです。
ぼんやりとでも見えたから、そこに潜る(ハマる)価値はきっとあります。小さく、少しずつでもいいので、3年間続くものをもっと増やしていこうと思います。
まとめ
最後にもう一度「忍」の1年にするために立てた5つの目標を整理します。
【1】1回勝つために9回負ける覚悟を
【2】不確実性や曖昧さを受け入れながら前に進む
【3】決断と戦略を心がけ、自分にしかできないことに打ち込む
【4】表に出る努力ではなく、内側を磨く努力を
【5】3年後を見据えて、深く潜る
2014年もあと10ヶ月。これらの目標をしっかり実現できるよう努力していきますので、皆さん今年もどうぞよろしくお願いいたします。