iPadの次はAakash!?ICTの中心は欧米からインドに!?
インドから革命が起こりそうです。それも2つ同時に。IT技術と教育における革命です。
2000年以降、アメリカはICT教育の分野において2度世界を驚かせました。
2005年、マサチューセッツ工科大学(MIT)は世界の子供達のために100$のラップトップPCの試作品を公開。コストダウン等の課題は今も残るものの、開発途上国の子供たちに革新的な教育ツールを提供しました。
2007年、米アップル社はタブレット型コンピューターであるiPadを発表。誰でも簡単に操作ができることが大きな特徴であり、世界中の学校現場で活用され始めました。
そして2010年。今度はインドがそのアメリカを驚かせます。
2010年7月。インド政府は35$のタブレットPCの開発に成功したと発表(BBC News South Asia)。人材資源開発大臣(Human Resource Development Minister)のカピル・シバル(Kapil Sibal)氏は、満面の笑みを浮かべながらこう語ります。
“This is part of the national initiative to take forward inclusive education. The solutions for tomorrow will emerge from India”
これは(貧しい人を含めた)全ての人たちに教育を提供するための国家構想の一部です。未来を切り開く方法は、インドから誕生するのです。
(Indian Expressより)
「空(sky)」を意味する「Aakash(アーカシュ)」と名付けられたこのタブレットPCは、12月末に発売が開始されたと同時に買い注文が殺到。
Economic Timesによると、2週間で140万件の受注が確認されたようです。記事の中ではiPadとの比較がされ、iPadは販売開始後4週間で100万件の売り上げだったこと、最も安いモデルのiPad(29500ルピー)の1/12の価格であることが述べられていました。
販売開始の際、カピル大臣はこう発言しています。
“The rich have access to the digital world, the poor and ordinary have been excluded. Aakash will end that digital divide.”
これまでは裕福な者がデジタル世界の恩恵を受け、貧しい者や普通の人はそれが叶わなかった。アカーシュは、このデジタルデバイド(情報格差)を終わらせるだろう。
(Order Your Aakash Tablet Nowより)
インド政府の狙いは教育改革。国内に存在する25,000を超える大学とその他の学校・教育研究機関をブロードバンドで結ぶことが大きな目的です。現在、インド第2の都市ムンバイでの導入の準備を進めています。販売予定価格は1138ルビー。市場販売価格の半分以下、iPadの1/20の価格です。
もしAakashがインド中の学校で導入されたら?
インドには解決しなければならない問題が沢山あります。インフラ整備から公害対策をはじめ、初等教育の水準も欧米諸国と比べればまだ低いです。
しかし、世界に通じる優秀なエンジニアやリーダーが育つことで、国内の課題を解決する技術が磨かれ、教育の質が向上していく未来もそう遠くはないでしょう。
では、もしAakashがインド中の学校で導入されたらどんな変化が起こるでしょう?
技術大国、インドへ
2008年、インドの自動車会社TATA(タタ)は米フォード傘下のジャガーとランド・ローバーを買収しました。英国の植民地だった国の企業が、英王室も購入している高級ブランドを飲み込んだのです。
TATAはインドの自動車ショーで29万円の超安価車「ナノ」を発表したことでも注目を浴びました。ジャガーが先進国の富裕層向けのブランドだとすれば、ナノは開発途上国の一般階級向けの車であり、この2つのアクションはTATAのブランド力を一気に高めるキッカケになったと言われています。
もちろん全てが順調なわけではなく、買収したブランドで赤字が出たり、先進国のミドル層にリーチ出来ていなかったりと課題は残るものの、非常に幅広いターゲットに合ったモノづくりができる技術力を持ったわけです。
車(ナノ)だけでなく、タブレットPC(Akasha)の展開。
どんな人に対しても、それに見合ったモノづくりができる技術。
人口10億人という幅広い顧客が自国にいるからこそ磨かれる力。
これこそが世界を変える大きな力になるでしょう。
教育大国、インドへ
ICT教育と言えば、デンマークやスウェーデン、フィンランドが有名である。世界経済フォーラムが発行している報告書「ネットワーク成熟度指標」(networked readiness index)を見ても、北欧諸国がICT教育に力を入れていることが分かります。
しかし、国全体の平均数値は低くとも、インドのICT教育への力の入れ具合は年々増してきている。たとえば、マイクロソフトの従業員の34%、IBMの従業員の28%、インテルの17%、ゼロックスの13%がインド人であり、IT業界で活躍する人が順調に増えている。
また、インドから米大学に留学する人は10万人を超え、ハーバード大学への入学率はここ10年で約2倍になるなど、インド人の飛躍を示す様々なデータもある。
AakashのようなタブレットPCが全国で普及すれば、この流れは更に加速するでしょう。現在、アメリカの医師やNASAの科学者の約4割がインド人です。世界最高峰の理系職業に就く人の半分以上がインド人ということも十分にあり得る未来なのです。
誰もが、どこに居ても簡単に、世界中の情報にアクセス出来るようになる。
そんな夢のような話がインドで現実味を帯び始めています。
技術と教育で世界の頂点を目指すインド、これから目が離せません。
そして、負けられません。
あとがき
Aakashに関わるHPや動画を最後に紹介します。
HP関連
▼AAKASH TABLET(Aakash販売の公式ページ)
※プレ予約なら可能。一応海外からも予約できるようですが果たして?
▼UbiSlate(Aakashを発売元DataWind社のオフィシャルサイト)
※タイプ用キーボード等もすでに用意されているようです。
▼Aakashtablet.org(ファンの人たちによって集められた最新情報)
※配送が遅れているようですね(2012年1月現在)。
▼日本の記事あれこれ
約3600円の格安7インチAndroidタブレット、インドで爆発的セールスを記録 タブレットは世界をどう変えるか【湯川】 : TechWave発売元の英DataWind社 …
いつも勉強になるTechWaveさんの記事。インドのツアーもあるようなので関心ある方はぜひ!!
インドで超低価格のAndroidタブレット「Aakash」が発売 | juggly.cn
国内外のAndroid(アンドロイド)情報がドンドン更新されるブログ。参考になります。
教育開発の仕事: インド タブレット Aakash
いつも貴重な情報ありがとうございます!教育と開発に興味のある方必見のブログです。
動画関連
▼2010年7月。カピル氏によって初めて公表された時の映像
▼カピル氏と二人の対談。Aakashの収支モデルや価格についての議論。
▼レビュー動画ありました!