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あれから随分と時間が流れました。
この休日は過去を振り返り、これから自分にとって何ができるのか、見つめ直す人が多いのではないでしょうか?
そんな方にぜひお伝えしたいお話があります。
“S”さんについてのお話です。
それはSさんにとって幸せな日になるはずでした。
大好きな人とこれから一緒に歩むことを誓う日。
結納の日でした。
突然の災害。
彼女は、命を落とします。
大好きな町での結婚式。
大好きな人との新婚旅行。
彼女の夢は無惨にも泥水と一緒に流されました。
そう、これは半年前の和歌山の台風被害のお話です。
奈良、和歌山で死亡・行方不明者は100名以上。
台風の被害としては平成に入ってから最悪の被害でした。
和歌山の最南部、那智勝浦町では現在も復興支援が行われています。
復興支援の先頭に立つのは那智勝浦の町長、寺本氏。
そう、Sさんのお父さんです。
今なお、復旧・復興に向けた陣頭指揮に立つ寺本氏。
「災害復興元年と位置づけ、災害に強い町づくりを進める」
これは先週、寺本氏が翌年度の予算案の説明の際に発した言葉です。
娘のSさんのみならず、奥さんまで失った寺本氏。
死を受けとめ、それでも前に進むと決めた覚悟の言葉でした。
この話は、私が和歌山の復興ボランティアに参加した際に聞きました。
以来、寺本氏と“S”さんに関するニュースはよくチェックしています。
しかし、“S”さんに関するニュースは一切ありません。
そう、私が和歌山で出会ったもう一人の“S”さんご家族のニュースです。
“S”さんは小さな男の子でした。
ちょっとヤンチャそうな子どもでした。
直接会ったことはありません。
写真を見ただけです。
泥まみれの家を整理していたら出てきた写真です。
ご近所の方に写真をお渡ししました。
写真と引き換えに、“S”から始まる名字を教えて頂きました。
お子さんを亡くされた“S”の名字を持つお父さんにはまだお会いできていません。
何度もニュースに出るSさんのお父さん。
一度もニュースに出ない“S”さんのお父さん。
二人の違いはどこにあるのでしょう?。
大切な子どもを亡くしました。
奥さんまで失いました。
その悲しみは比較できるものではないでしょう。
しかしながら、歴史に残るのは限られた人のみです。
“S”さんの歴史が残されることは、おそらくありません。
和歌山や奈良には他にも同じ境遇の“S”さんがいるでしょう。
東北にはその何倍もの“S”さんがいるでしょう。
そして、世界には更にその何倍もの“S”さんがいるでしょう。
この記事のトップの写真は2年前のハイチの地震です。
死者の数は東日本大震災の15〜20倍です。
一方、和歌山は東日本大震災の被害の100分の1以下です。
異なる3つの災害と被害。
しかし、本当に違いはあるのでしょうか?
違いがあるとすれば規模の問題でしょうか?
距離の問題でしょうか?
それとも、心の問題でしょうか?
私にできることがあります。
それは心を変えることです。
遠い問題を近くに感じる心。
小さな問題を大きく受けとめる心。
心を変えることから始めたいと思います。
これまで不運にも亡くなった全ての“S”さんの分まで、
心を込めて生きていこうと思います。
@3_wa
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